それは、幼き頃の淡い思い出… ...遠い日の思い出
ばしゃばしゃ 「つめた〜い!」 ビニールで出来た小さなプール。 その中に、高さの半分くらいまで水が満たされている。 そこで、青い水玉模様のワンピースを着た少女が、足を水につけて遊んでいた。 すると、 「ら〜ん!」 「なにー、」 バシャッ 「へっへーん、ひっかかったー!」 「あー、せっかくのワンピースが。しんいちのばかー!」 どうやら、しんいちと呼ばれた少年は、らんに水をかけたようだ。。 身に付けているのはズボンだけで、頭からびしょびしょだった。 「そっちのほうがすずしいだろ?」 「ぬれたらかぜひいちゃうもん!きがえてくる。」 らんは、プールをまたいで整えられている芝生を走って行った。 「…おれもきがえようっと。」 しんいちは、らんの後を追って行った。 コンコン 「はーい」 ガチャ 「あら、らんちゃんどうしたの?そんなにびしょ濡れになって。」 出迎えたのは、しんいちの母親の有紀子。 「しんいちがね、みずいっぱいかけてきたの。」 「まぁ、あの子イタズラっ子ね。それじゃ、着替える前にタオルでふきましょうね。」 「はーい。」 ちょっと待っててね、と言って奥に行ってしまい、らんはぽつんとそこに立っていた。 その時、後ろの玄関のドアが開き、しんいちが先程の姿のまま入ってきた。 「らん、はいらないの?」 「ぬれたままじゃはいれないから、しんいちのおかあさんがタオルとりにいってくれたの。」 「じゃあおれもまってよ。」 そう言ってすぐ、有紀子が帰ってきた。 その手には真っ白なバスタオル。 「あら、しんちゃんまでぬれてるじゃない。どうしたの?」 「あつかったからじぶんでかけた。」 「そんなことしたら風邪引いちゃうでしょ。それに、今日はお客様も来るんだから。」 「「おきゃくさま?」」 しんいちとらんは、渡された1枚の大きなバスタオルで、頭を拭いている。 「そう。2人と同い年の男の子。」 「そのこ、ひとりでくるの?」 「いえ、その子のお父さんと2人で来るの。そろそろ来るから、2人とも着替えてらっしゃい。」 「「はーい!」」 2人は急いでサンダルを抜いて、着替えの置いてある部屋へと走って行った。 丁度その時、 ピンポーン 少し高めの音が、家中に鳴り響いた。 「しんいち、おきゃくさまきたみたいだよ。」 「うん、はやくきがえよう。」 しんいちが目の前のドアを開けようとした時、 「そこのボウヤとお嬢さん、ストーップ。」 後ろからの声に、2人はびっくりして振り返った。 「お父さん!」 立っていたの、新一の父親の優作。 優作は、にっこりと笑って2人の着替えを差し出した。 「2人とも、世界一のマジシャンに着替えさせてもらわないかい?」 しんいちとらんは、顔を見合わせて首を傾げた。 優作としんいちとらんが、リビングに入ると有希子とお客の男が向かいのソファに座って話していた。 有希子は入ってきたしんいちとらんを見て不思議そうに言った。 「あら、まだ着替えてないの?」 すると、優作がにこりと笑って、 「そこの魔術師さんに着替えさせてもらおうって私が言ったんだよ。」 と、男に聞こえるように話した。 「そうだな、挨拶代わりに1つ見せようか。」 男は、すくっと立ち上がりしんいちとらんの傍に来ると、しゃがんで目線を合わせた。 「初めまして、僕の名前は黒羽盗一。色んな国でマジックをやっているんだよ。」 「「マジック?」」 しんいちとらんは首を傾げた。 「そう、それを今から見せてあげよう。2人の服を一瞬で変えるマジックだ。2人共、目を閉じて。」 2人は素直に目を閉じる。 「3つ数えたら目を開けてね。ワン・ツー・スリー!」 しんいちとらんは、同時にパッと目を開け、自分の着ている服を確かめた。 「うわー、ほんとうにかわってる!すごーい!!」 らんは、大はしゃぎして盗一に抱き付いた。 しんいちは、未だに信じられなくて後ろに立っている優作の回りを、ぐるぐる回って持っていないか確かめていた。 「そうだ、僕の息子の紹介がまだだったね。おいで、快斗。」 「はーい。」 かいとと呼ばれた男の子は、ソファを降りてしんいちとらんの前に出た。 「「「あっ!!」」」 しんいちとらんはかいとを、かいとはしんいちを指さして固まった。 「あらぁ、やっぱりしんちゃんとかいとくんはそっくりねv」 有希子は、にっこり笑って両手を合わせた。 「ほら、快斗。挨拶しなさい。」 かいとは、盗一の言葉に我に返り慌てて腕を下ろし、一礼した。 「ぼくは、くろばかいと。よろしく。」 しんいちとらんも、慌てて腕を下ろす。 「おれは、くどうしんいち。よろしく。」 「わたしは、もうりらん。こちらこそよろしく。」 3人は、にっこりと笑い合った。 「それじゃあ、自己紹介もすんだし、お茶にしましょうか。」 「「「はーい!」」」 有希子の言葉に、3人は元気良く返事をした。 「へ〜、かいとくんも、マジシャンになりたいんだ。」 「うん、いろんなところでいっぱいショーをひらいて、いつかおとうさんをぬくんだ!」 子供3人はカーペットで、大人3人はソファーで向かい合い、楽しく談笑していた。 「しんいちも、ゆめあるよね?」 「うん、ぜったいホームズみたいなたんていになるんだ!」 しんいちは、嬉しそうに話す。 「…いいなぁ〜ふたりとも、ゆめもってて。」 らんは少し悲しい顔をする。 「らんちゃんは、ゆめないの?」 「ゆめじゃないけど、なりたいってものならあるの。」 「なに?」 「…しんいちのおよめさん。」 顔を真っ赤にさせて、らんははっきりと答えた。 「おれの?」 「…うん。」 「ぼくもなりたいなー。」 「「え?!」」 かいとの言葉に、しんいちとらんがかいとを凝視した。 らんは、はっと我に返りかいとに反論した。 「だめだよ、かいとくん。おとこのこどうしでは、けっこんできないんだよ。」 「べつにけっこんしなくても、どうさいすればいいもん。」 「でもだめ、わたしがなる!」 「ぼくがなる!」 らんとかいとは睨み合い、しんいちは2人の様子をじっと見つめていた。 「わたしのほうが、しんいちのことしってるもん!」 「ぼくはこれからなかよくなって、しんいちのことわかってくんだもん!」 「わたしのほうが、いえちかいもん!」 「ひっこせばちかくなるもん!」 2人が言い争うこと5分。 だんだん息があがってきた。 「…しんいちにきめてもらったほうがはやいよね?」 「そうだね。」 らんの提案にかいとは頷き、しんいちのほうを見た。 「「しんいちは、どっちといっしょにすみたい?」」 いつのまにか論点がズレたらしく、2人はしんいちに詰め寄った。 「おれ?」 「「うん!」」 「…おれは、3にんでいっしょにすみたい。」 チリリリリリリリリ… カチッ蘭はむくりと起き上がり、呟いた。 「なんだったんだろう、あの夢。」 それは、遠い遠い記憶の中に… end? [ Bule is Like ] の葵空華さまから二万打記念フリー小説を頂いて来てしまいましたvv あぁぁ気になる…!続きがごっつ気になります…! 葵さま、続きを希望したらダメですかー?? 小さい頃に知り合うふたり…に蘭ちゃんを混ぜちゃうのが、なんとも楽しかったですvv クロキの大好きなパパーズも出てて嬉しい限り♪ 優作パパも盗一パパも原作風な性格で楽しかったです! っていうか快斗、君は一目惚れかー!v ステキなお話しを有り難う御座いました。今後も更新楽しみにしておりますv BACK |