「え、会わせたい人?」 『あぁ、ちょっと紹介しときたい奴がいてさ。』 「わかったわ、それじゃあ午後から行くわね。」 『おう、待ってる。』 ...新たな願い
新一が戻って来て1ヶ月。 蘭にとって、新一がいる生活がまた始まった。 前のように学校へ行く時迎えに行ったり、園子と一緒に買い物に行く時着いて来てもらったり。 ただ、彼とはもう友達という関係。 新一が戻ってきたとき、蘭はふられていた。 でも、蘭は涙を流さなかった。 とにかく、そんなこんなで再開してから1度も新一の家に行っていない。 だから、新一が蘭に紹介しておきたい人となると… (恋人しかいないわよね) 蘭は、そう考えつつ1人分少なくなった昼食を作って食べ、鼻歌混じりに家を出た。 ピンポーン 『はい。』 「新一、私。」 『おう、今開ける。』 久しぶりに潜る工藤邸。 中の庭はほとんど変わっていない。 蘭はドキドキしながらドアが開くのを待った。 ガチャ 「よっ。」 「こんにちは、お邪魔しまーす。」 出されていたスリッパをはいて、蘭は家に入った。 「なんか前より綺麗になってない?物も増えてるし…。」 キョロキョロと見回すと、前に掃除に来た時にはなかったものがいくつか。 「あぁ、それは…。」 「俺のだよー。ちなみに掃除も俺がしたの。」 「え?」 新一に似た、新一ではない声。 突然の声に、蘭は慌てて振り返った。 新一の隣には、1人の青年が立っていた。 くせっ毛の強い、人懐っこい顔をしていて、とても変わった雰囲気を出している。 「こいつが俺の紹介したかった相手。」 「黒羽快斗でーす。よろしく蘭ちゃんv」 蘭は快斗を見てしばし呆然としていた。 「くろば、かいと……あー!!」 蘭の絶叫の後、とりあえずリビングへ移動し、叫んだ原因―――夢のこと―――を話した。 「へー、俺達って小さい頃会ってたのか。」 「俺、なんとなく思い出してきた。」 前者は新一、後者は快斗。 蘭は、くすくすと笑っていた。 「私も、あの夢見なきゃ絶対思い出さなかったわ。」 「一種の予知能力かもね。」 「しっかし、お前は全然変わんねぇんだな、ガキの頃から。」 「え、それって俺がカワイイってこと?」 「ばーか、幼稚だってことだよ。」 「酷っっ。」 快斗は、ソファの端に寄っていじけている。 「そういえば、快斗君の夢叶ったの?」 「んー叶ったのかなー?一応マジックは出来るけど、まだまだ親父には敵わないよ。」 「マジックじゃなくて、もう1つのほうよ。」 「もう1つ?」 「新一と同棲すること。」 蘭の言葉に、新一は固まった。 「あ、そうだね!じゃああとは親父を超すだけだね。」 快斗はにこにこと笑っている。 「…蘭、さっきの本当か?」 「えぇ、本当よ。確か夢でそう言ってたもの。」 「で、俺なんて答えた?」 新一は、俯きながら言う。 「実はね、そのことで私と快斗君が喧嘩したのよ。」 「「喧嘩?!」」 新一は顔を上げ、快斗と揃って叫んだ。 「私の夢、っていうか願いが『新一と結婚すること』で、私と快斗君どっちが新一と結婚するかで言い争って、結局どっちが一緒に住むかってことになったんだけど。」 「「それで?!」」 「新一は、『3人で一緒に住みたい』って言ったの。」 「「……。」」 新一は、ほっとため息をつき、快斗は落胆のため息をついた。 「でも、結局私の願いは叶わなかったのよねー。」 蘭はふぅと息をつく。 「蘭ちゃんもこっちに住めばいいじゃん。ねぇ、新一。」 快斗は新一に提案する。新一が了承の言葉を出す前に、蘭が遮った。 「いいのよ、なんか2人共ラブラブみたいだし。」 蘭はにっこりと2人に向かって笑った。 「それに、私ひとつ決めた事があるの。」 すくっと立ち上がって、蘭は後ろを向いた。 2人は呆然と蘭を見る。 「快斗君。」 「な、何?」 「新一捨てたら、私の空手お見舞いするからね。」 くるりと振り返った蘭の顔は、満面の笑顔。 快斗はびしっと立ち上がり、 「大丈夫です、俺達絶対別れません。」 真剣な顔つきで、蘭に宣言した。 「よろしい。それが聞けて安心したわ。」 蘭はドアに向かってスタスタと歩き始めた。 「ど、何処行くんだ蘭。」 今まで呆然としていた新一は、蘭を引きとめた。 「もう用は無さそうだし、帰るね。」 「あ、あぁ。」 新一も立ち上がり、快斗と一緒に蘭を玄関まで見送った。 「また呼んでね、新一。」 「あぁ。」 「それじゃ、バイバイ。」 「ばいばい。」 パタン 「…恐るべし、女の勘。」 快斗はぼそりと呟いた。 End [ Bule is Like ] の葵空華さまから、二万打記念フリー小説の続きを!を頂いてしまいました!! 続きが読みたいなぁ、と思っていた矢先にこんな素晴らしい頂き物…! 有り難う御座います!ヽ(*´∇`*)ノ ヤタヨーvv 蘭ちゃんはやっぱり魅力的なイイ女ですよね。 女の子らしく弱い面も持ってるのに、新一のことをよく解ってくれる強い面も持ってて。 そこのところを絶妙に表現される葵さまの文章がとても好きですv 一瞬、3人で暮らし出しちゃうのかー!?と思いましたが、さすが蘭ちゃん。 引き際(笑)を心得ているようで、クロキ的にはとっても好みな終わり方でしたvv 葵さま、ステキなお話をどうも有り難う御座いました! BACK |