目が覚めたら。
……目の前の男をきつく抱き締め、キスしていた。
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Kiss me, Embrace me―A Happy New Year in 2004―
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「ッ!??」
新一は―――それこそ心底驚いた。
目の前には端正な自分の顔のつくりに似た、もう一つの顔がそこにあった。
何度も瞬きをして確認する。
確かに自分の腕は相手の首に回っていて。
確かに自分の唇には相手のそれの温もりが残っている。
コイツは年末に母親の元へと帰っていった筈で、むしろここに居る筈がないわけで。
…幻?
いや残る温もりは温かいもので。
全く事態についていけず、新一は動揺していた。
それなのに。
それとなくゆっくり目を開けて、開口一番。
「おはよv新一」
相手はそれをなんでもなかったように自分にそう告げてくる。
元怪盗、なんていう素敵な前歴を持つ彼―――黒羽快斗は自分同様人の気配には敏感で、増してや自分に触れてきたならすぐに気付いただろう。
しかし気付いたなら、自分を突き放すなりしてもいいのではないか?
いや、それ以前に。
俺(男)にキスされて平然としているその神経を疑いたい。
「おはよvんでもってあけましておめでとう」
「…あ、あぁ、うん、おめでとう」
「お節料理、持って来たんだ。お吸い物、作るね」
いきなり家庭的なことを話し始めたソイツは先程のことはなかったことにするのか。
もう新一の頭はパニックである。
ああ、あともう一つ。
あまりに衝撃的過ぎて根本的なことを忘れていた。
「……っていうか。何でいんだよ、オメー」
そう。そうである。
しかもあろうことか、何故人の布団に潜り込んでいるのか。
全く何がしたいのか意味が判らない。
「そんなの。新一と新年を迎えたかったからに決まってるじゃん」
決まってる。
そうか、決まってるのか。
「いやいや、待て待て、鍵は!?」
「んー…開けた」
「開けたって!!俺の前で不法侵入するとは、いい度胸じゃねえか!」
「そんなー。新一と俺の仲じゃん」
「どんな仲だよ!!」
そう新一が訴えた途端に、新一は―――
次の瞬間押し倒されていた。
細い手首を力強く捕まれている。
「って、おい!」
「新一〜、そんなに俺が欲しかったらいつだってあげたのにv」
「は!?」
「嬉しかったよ〜。新一からしてくれるなんて、さ」
快斗の顔が新一の方へと近付いてくる。
新一はぎゅ、と目を閉じた。
ふわり、と
優しく唇が瞼に落ちる。
「……え?」
自分は何を期待していたのか、なんだか拍子抜けたような声を出してしまう。
「快斗?」
「何?―――あ、それとも、最後までやって欲しかった?」
「……バッ……んっ」
罵声を発しようとした口を今度こそ塞がれる。
「……快、」
少しだけ唇が離れた瞬間、名前を呼ぼうとした時、今度は深く重ねられた。
息が漏れる。
時が、止まる。
「着替えてから、おいで。―――それとも、着替えさせて欲しい?」
息の上がった自分を楽しそうに見つめ、そんな軽口を掛けてくる。
新一はそんな快斗を精一杯睨みつけた。―――可愛いだけである(笑)
パタン、と閉じた扉を確認すると、新一は真っ赤になる顔を抑えようと布団へと顔を静めた。
ふいうちだ。
もう、ふいうちでもなんでも―――なんて、気持ちがいいんだ。
「詐欺だ」
別に今現在新一と快斗の関係はなんでもない。
そう、友達で、もっと言えば『親友』。少なくとも新一はそう思っていた。
年末に自分の家へと帰って行った彼を見送りながら「淋しい」とか感じたのも事実だった。
そして…いつもその長い指や端正な顔、体つきを見るたびにドキドキしたことも……あったかもしれない。
でも、言うつもりもなかったのに。
確信犯的な快斗の顔が浮ぶ。
重ねられた唇はしっとりとしていた。
「…知、ってた、とか…?ハハ……」
新一は真っ赤になりながらも新年一番の幸せを感じているのだった。
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空さんより素敵な年賀小説を頂いてしまいました!!
……新年早々激甘なふたりにあてられちゃった〜vv(*´∀`*)
もうもう、空さんの書かれるお話はシリアスも良いのに、どうして甘々もこんなに良いんでしょう…!
一度砂吐き…むしろ砂糖吐けるくらいのお話を書いてみたいものです。
「なんて気持ちがいいんだ」なんて、なんて本音な台詞…!
さりげにエロく感じるのは私の煩悩ゆえでしょうか(笑)
とにかく、あまり見られない新一からのチュウvvということで、すっごく萌えさせて頂きましたv
今年はいい年になりそうです♪
空さん、どうも有り難う御座いました!
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