出合ったのは、七月だった。 サンタというものは、七月からが学校というものがあるからだ。 見習いのサンタは大抵ペアを組んで仕事をこなす。 その後、一人前になった後はペアでしても一人でしても問題はない。 見習いの間は、迷子になったり、困った事があったときのためのパートーナー制を使っているのだ。 だから、新入生には必ず一年は経験があるサンタがパートナーになるのである。 本日は新入生を迎える数日前。 担当するサンタをどうするかという事で話し合いがあったのだ。 別に、年上と組んでもいいが、一年でも経験すると、上とやるよりも下とやる方がいいという人もいれば、このままのペアで行くという人もいる。 そんなこんなで、ペアを変えたいと言ってきた者達が新入生に当てられるのであるが・・・。 「この子可愛い。」 「私、この子がいいわ。」 などと、結構付き合いやすそうな感じで写真と資料を見比べて事前にいろいろしてあったりもする。 「ねぇ、快斗は誰にするの?」 「そうね。すごく興味があるわ。上からも呼ばれている天才サンタさん。」 「うるせぇ。」 新入生の時から、人の手を借りずとも完璧にこなす快斗には、どちらかというとパートナーなどはどうでも良かったりもする。 しかし、ふと面倒くせぇと適当につかんだ写真の束の中にあった一人に目が止まった。 「どうしたの?」 「俺決めた。俺はこいつにする。」 写真をしっかりとポケットにしまって、資料からその写真の人物の名前を頼りに探し出した。 「じゃーな。行ってくる。」 担当に、自分の相手は彼に決めたことを伝えてくるとさっさと部屋を出たのだった。 「珍しいわね。」 「そうだね。ねぇ、探君は誰にするの?」 「どうしましょうか。」 こんな感じで、パートナーは全員決まり、新入生を迎える日がやって来るのだった。 |
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さて。今年新米サンタとして勉強を始めることになった新一。 パートナーは自分の力で広い校内の中から探さないといけない。 「・・・この辺だと思うんだけど・・・。」 探す手がかりとして与えられるのは、片方のイヤリングやペアのリングや時計や小さな飾りなどいろいろある。 それを身に着けていたりするサンタを探して一年よろしくお願いしますと名前を名乗るのであるが、新一が渡されたのは、なんと紙切れ一枚。 だけど、新一はそれはそれでうれしかったりもした。 新一が大好きな暗号で書かれたものだからだ。それも結構難解で楽しめたから相手がどんな奴だろうと楽しみだった。 そして、解いた場所は東の端にある塔の最上階。 普段は立ち入り禁止にされているが、その場所が答えなのだから、行ってみようと思ったのだ。 すると、普段は鍵がかかっているはずの入り口の扉は開いていた。 やっぱり誰かいるのかなと、新一は中の様子を伺って高く続く階段を上るのだった。 最後の階段を上り終えて、疲れたと肩で息をしながら、光が指す窓の方を見た。 すると、そこには一人のサンタがいたのだった。 サンタがこっちを見て、にっこりと新一の方を見て、先ほどまで座っていた窓枠から降りて近づいてきた。 「いらっしゃい。はじめまして、新一。パートナーとして一緒にやらせてもらう、快斗だよ。」 手を差し出されて、名乗る前に名前を言われたが、一応新一だと名乗ってその手を取った。 「あ〜、写真で見るよりも可愛い。」 ぎゅうっと抱きしめられた。 可愛いといわれて、男に言うなよ、馬鹿と叫んだが、階段で疲れているので、抵抗も弱く、快斗に抱きしめられたままだった。 「やっと会えたよ。写真見たときからずっと会いたくてさ。」 なんだか、会ってはいけないパートナーだったのかもしれないと新一は不安に思い始めた。 「おっと。もうすぐ授業だ。今日から半年、よろしくね。」 ちゅっと、頬にキスをするのだった。 一瞬思考も全てフリーズしていた新一だが、すぐに顔を紅くして変態と叫んだ。 だが、変態はひどいなと言うだけで、相変わらずにこにこしていて、やっぱり変な奴だと新一は認識したのだった。 その後も、窓から新一をお姫様だっこで抱えたまま飛び降り、突如やって来たそりとトナカイに引かれて教室まで行く始末。 担任は快斗のことを天才だが問題児としているのだと後で知った。 クラスでは、快斗と仲がいいのか悪いのかいまいちわからないメンバーが固まっていた。 新一の幼馴染の蘭や、言動が最近わからない平次もいた。それに、自分の主治医代わりにいろいろやってくれる志保もいた。 半年、平和に終われるだろうかと不安に思う新一だった。 それから数ヵ月後。 「これは、新一君じゃないですか。」 担当に呼ばれて言ってしまった快斗と一緒に食事をしようと、お昼に外のベンチで座っていたら探が声をかけてきた。 隣いいですかと言われて、快斗が来るから場所は空かないと言ったが、彼ならまだ来ませんよと、勝手に座った。 最近思うのだが、探は平次と同じようにたまに言動がよくわからない。 「出来れば僕も新一君のパートナーをやりたかったですよ。」 快斗君に先を越されるなんて、残念ですと言う。 これも後で知ったのだが、最初から資料があってパートナー候補が選んでいるらしいということ。 上手くあう相手とめぐり合うかは結構運も必要らしい。 その点では、相変わらず大げさでうるさくて変だが、快斗で良かったと思う。 彼は仕事に関してはプロと並ぶほどだから、見ていて感心する。 それに、あんなのの何処がいいのかはわからないが、どうやら女子には人気があるらしい。 ちなみに新一は男女共に人気があり、探や平次も狙っているのだとは気付いていないが。 だからこそ、一目ぼれをした快斗が守っているのだが、本人は今だに気付かないままである。 「今からでも遅くはありません。申請しにいきませんか?パートナー交換をっ!」 いきなり両手を攫まれて、探の顔が新一を見つめていた。 そこへ、何かが飛んできて探の頭にヒットした。 「何馬鹿言ってやがる。」 やってきたのは快斗だった。投げたのはどうやら本らしい。先ほどの授業で配られた物だ。 とても言い音がしたし、痛そうだ。 「新一は俺のパートナーなの。そして、一生新一は俺となの。」 いつのまにか快斗の腕が新一の身体に絡みつき、捕獲された。 「行くよ、新一。」 「なぁ、、昼。」 「あいつがいるから別の場所ね。」 新一を肩にかついで反対の手でしっかりとお弁当を持って、探についてくるなよと釘をさして退場する。 喧嘩するほど仲が良いと言う奴のような気もするが、何かがまた違う気がする。 それは、新一を取り合っているのだが、わかっていないので新一が理解できる日はまだ遠い。 そしてやって来たのは出合った例の場所。 「なぁ。ここって立ち入り禁止。」 「開くからいいの。」 「でも、快斗が開けてるんだろ?」 「まぁ、そうだね。鍵開けは得意。」 「サンタには必要ないだろ?」 「そうだね。でも、隠れたり隠したりするときにはとっても便利。」 サンタをやめたら、きっと泥棒になるつもりなんだと思ってその話はやめておいた。これ以上続けても無意味な気がしたのである。 「そうそう。来月の頭に、プレゼントの仕分けがあるからね。」 「そっか。」 そんな会話をしながら仲良く昼食を食べて、眠くなった新一はいつの間にか寝ていた。 「寝顔も可愛いよねぇ。」 新一の性格がわかっても、可愛いという言葉を本人の前で言わないということはほとんどない。 可愛いのだから可愛いといってしまうのだ。不可抗力だと言えば、知り合い達からも散々言われてきたらしく、諦めたようだ。 まぁ、睨んではくるが、迫力はまったくないのはお分かりの通り。 「懐いてくれるのはうれしいけどね。」 その好きじゃないって言ったら、どうすると新一の寝顔に向かって言う。すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえるだけで、快斗はただ苦笑するだけだった。 無防備に寝られては、信頼されているのはうれしくても理性というものが・・・。 今は嫌われたくはなく、ただのお兄さんでもいいからと、抑えるのだった。 そんな快斗は寝顔を堪能しながら、のんびりと過ごすのだった。 時は過ぎ、やって来たのはプレゼントの仕分け。 大きな白い袋に訪問予定先の荷物を順番に詰め込んでいく。 「よいしょっ。」 大きな袋を動かすのは大変だ。 新一はいそいそと中を整理しながら詰め込んでいく。 その背後では、ジングルベールと歌いながらプレゼントを運んでくる快斗がいる。 「新一〜、どう?」 「もうちょっと〜。」 配達した時にわかりやすいようにと中を並べて必死になっていた。 そうしたら、つるっとすべり、新一は袋の中にダイブした。 「し、新一っ?!」 プレゼントを放り出して、快斗は袋に近づく。 すると、もぞもぞ動いて新一が袋から顔を出した。 「大丈夫?」 「なんとか。」 帽子が落ちかかっていて、それをしっかりとかぶせてやりながら、抱きついてくる快斗。 「怪我してない?大丈夫?本当に本当に?」 「うん。大丈夫。」 快斗は新一を袋から出して、本当に怪我はないかとチェックする。 他人にそこまでする必要はあるのかと新一は思ったが、こけたり掠ったりするたびにこれなので、いい加減慣れたが、今思えば、パートナーの怪我や病気は互いが監視し管理もするようにしていることもあり、責任感があるんだなと思って気にしてなかった。 「じゃぁ、さっさと終わらせようね。」 「うん。」 二人で一生懸命やって、次の日には終われた。 これで、クリスマスまでの一週間、余裕を持って過ごす事が出来る。 そして、当日がやって来た。 この日こそ、サンタでの一番の仕事で、進級するための試験でもある。 それと同時に、終われば二ヶ月程歴史だったり、世界の町の地理や風習やプレゼントに関する講義などを受ければ終わり。 今のパートナーと別れることもある時期。 きっと、今回のように快斗は新しい新入生とまたパートナーをやるんだろうなと思いながら新一は今日一日は快斗の足をひっぱらないように頑張るぞと決意を新たにする。 快斗が操縦するそりで、新一は家の前に来たらプレゼントを袋からだして、二人で家の中に入って靴下に入れるという作業を一晩中行った。 そして、最後の家。 「これで終わりだ。」 「予定より早く終わったね。」 そう、普通のサンタなら、もう少し遅い。 それはやっぱり、快斗だからだと思う。 「お疲れ様。」 ぽんっと、新一の両手に小さな箱を乗せた。 「何?」 「ん?それ?それはね、クリスマスプレゼント。サンタがもらわないっていう規則ないしね。」 新一だってもらっても問題ないしねと、くれた。 サンタはあげる側で貰う側ではないと、今まで言い聞かせて我慢していたところもあった。 別にほしいわけではないが、やっぱり同じようにほしいと思ってしまうのだ。 それを、快斗はあっさりとくれた。 それがとてもうれしかった。その気持ちが。 「ありがとう。」 自然と出る笑みでお礼を言う。 「もう、新一可愛い。」 他の人に見せたら嫌だよといいながら抱きついてきた。 可愛い言うなというが、うれしさの方が強くてあまり強くは言わなかった。 そのまま、そりに乗って帰る二人だったが。 「あらら。新一寝ちゃってるよ。」 いつのまにか腕の中で一定の間隔で寝息を立てながら眠る新一の姿があった。 「本当に、可愛いよねぇ。」 安全運転で帰らないとねと、トナカイにゆっくり走るように指示をして、のんびりと夜の空をそりで走るのだった。 |
管理人のアトガキ▼ 「双鏡滝館」の李瀬紅姫さまより頂きました、クリスマス小説&イラストですvv なんとも時季外れなアップになってしまって非常に申し訳ありません(´Д`; ですがしっかりと懐に仕舞わせて頂いておりましたので(笑) サンタクロースな快斗と新一。そして先輩な快斗vv 毎回素敵な設定を見せて下さる紅姫さんですが、今回もやってくれました! そして俺様かつ一匹狼な快斗くんを一目で陥落させてしまう新一さん、相変わらず見事ですv 新ちゃんの魅力の前には誰も叶わないのですね!うへへvv 最後になりましたが紅姫さん、どうも有り難う御座いましたー! |