差し出された手の温度を、きっと一生忘れない――。 新一は、手を引かれるままに歩いていた。 遠ざかる喧騒。 この場所までは、パトカーのサイレンも救急車のサイレンも聞こえない。 人の往来の激しい歩道の中で、新一には自分の呼吸音ですら聞こえていなかった。 今、新一の手を引いているのは、全く知らない少年だ。 会話をしたこともなければ見たこともない、そんな少年だ。 けれど何の抵抗もなくこうしてついて行ってるのは……掴んでいる少年の手が、暖かいからだ。 事件も警察も容疑者も全て中途半端に放り出して、新一は今、ここにいる。 それでも全く気にならないのは……知らないはずの少年の気配が、よく知っている冷涼なものだからだ。 ぴたりと、前を歩いていた少年が止まる。 気付けばどこかの路地裏で、人の気配と言えば自分と彼のものだけである。 止まった少年に合わせて、新一もまた足を止めた。 それまでただもくもくと前を向いて歩いていた少年が、くるりとこちらに向き直る。 真っ直ぐに新一を見つめる瞳は、紫水晶のようで、けれどそれよりずっと綺麗な光を称えていた。 新一は彼の顔を凝視して、数回瞬く。 少年の顔があまりに自分と似ていたからだ。 鏡の向こうとこちらに立っている気分だったが、やがて自分のそれとよく似た口が動いた。 「悔しいんだろ」 声までもがそっくりだったが、新一はもう驚かない。 それよりも言われた言葉に眉を寄せた。 「我慢するなよ。悔しいって顔に書いてある」 「…テメェに何がわかる」 掴まれている腕が不意に煩わしくなる。 心地よかった熱も鬱陶しくなり、新一は振り払おうと腕に力を込めた。 けれど新一の力より更に強い力を込められて、それを阻止されてしまう。 新一は少年をギッと睨み付け、無言で威圧した。 大抵の人間はその睨みで震え上がってしまうのだが、目の前のこの少年は違った。 怯えるどころか、表情ひとつ変えずに言う。 「わかんないよ。…わかるわけないじゃん。俺にはお前の考えてることなんて、これっぽっちもわかんねえよ」 「…だったら勝手なこと言うんじゃねえ」 あっさり認め、何度もわからないと繰り返す少年。 掴まれた腕が痛みを訴える。 大して強く掴まれているわけでもないのに、妙に腕が痛くなった。 振り払おうにも新一は力を込めることが出来ず、ままならない。 ただ、何かを言おうとした唇が震えて言葉に成らず、そのまま噤んでしまった。 アメジストの瞳が、そんな新一の様子を何ひとつもらすまいと見つめている。 その視線すらも痛くなって、新一は顔を背けたくなった。 あと数秒もしたら背けてしまいそうになったとき、少年が口を開いた。 「でも、わからなくても、俺には見えるんだ」 痛みが痺れとなり、痺れはなぜか微かに疼いた。 「新一」 名前を呼ばれ、新一は驚いた。 自分の名前を知っているからではない。 呼ばれたことのない名前で呼ばれたからだ。 「新一。……泣いて、良いんだよ」 驚きに瞠られた瞳を、さらに大きく瞠った。 「…泣いてねぇ」 「うん」 「俺は泣いてなんかねぇよ」 「うん」 どこかに怪我をしているわけではない。 誰に何を言われたわけでもない。 新一が泣く理由などないし、増して涙を流してもいなかった。 それなのにこの男は、なぜ「泣く」などという言葉を口にしたのか…… 「涙を流さずに泣くなんて、そんな不器用な真似すんなよ」 痺れがまして、掴まれた腕が疼き、その疼きをなぜか愛おしく思った。 少年の手から伝わる温度が甘い痺れとなり、新一の体を侵していく。 不意に瞳の奧が熱くなるような気がして、新一はとうとう俯いてしまった。 誰も居ない路地裏で、少年が掴んでいた腕をぐいと引き寄せる。 新一は引かれるままに少年の腕の中に抱き締められていた。 手首にだけ感じていた温度が、頬に、胸に、背中に……至る所から伝わってくる。 少しずつ蝕んでいた痺れが、一気に全体に伝わった。 大きくて繊細で、それでいて優しい手が髪の中に入れられる。 そのまま何度も何度も緩い手つきで梳きながら、耳元に唇を寄せて少年が呟いた。 「泣いて良いんだよ。泣くときは、涙を流したら良いんだ。こんな泣き方してたら…いつかバランスが崩れちまう」 伝わる温度を、煩わしいとは思わない。 抱き締められた体を、もう痛いとは思えない。 ただ、この温度を、もう離せないと新一は思っていた。 全身を蝕んでいく他人の温度は心地良いとしか思えず、自分が何よりも欲していたものがそれだと気付かされてしまったから。 不意に胸ポケットに入れてあった携帯が振動する。 誰からの着信かなどわかりきっていたが、新一は出ようとはしなかった。 突然姿を消した自分を心配しているだろう警部を放って、ただ少年の腕の中に居た。 けれど、涙は流れなかった。 その日から、少年は工藤邸の居候となる。 |
xxxxxxxxxxxx 慟哭 xxxxxxxxxxxx |
新一は、目の前で布団を蹴っ飛ばして眠っている少年を、半ば諦めたような表情で眺めていた。 少年の名前は黒羽快斗。 驚くほど自分と似通った顔のこの男は……実は怪盗キッドである。 その稀代の大怪盗さまが眠っているのは、稀代の名探偵の自宅の客間の一室。 彼の私物が所狭しと置かれていることから、彼がここの住人なのだと知れる。 そう。 怪盗であるはずの快斗は今、天敵であるはずの名探偵工藤新一の家に居候しているのだ。 新一は諦めたような表情のまま、盛大に溜息をついた。 これが、あの、男女問わずに大人気の犯罪者だと言うのだから、呆れを通り越して諦めるしかないのだろう。 怪盗紳士の異名を持つ男が、布団を蹴っ飛ばして、すでに登校時間はとっくに過ぎたと言うのに暢気に寝転けている。 更に言うなら新一もまだ寝間着のままだ。 やはりもう色々と諦めるしかないと、新一は自室へと戻った。 新一が扉を閉めた直後、規則正しい寝息を立てて幸せそうな寝顔を見せていた快斗が、パッチリと目を開けた。 カーテン越しの太陽の光の中でも、その瞳は綺麗なアメジストの輝きをしている。 その輝きは、寝起きの眼差しとは180度違っていた。 こっそりとベッドを降りて扉の側へと歩み寄る。 ぴたりと扉に耳を押し当てて、この部屋の向かいに位置する新一の部屋の様子を伺った。 ひたひたと少し歩き回る音がしてから、やがてベッドの軋む微かな音が聞こえ、それからは何も聞こえなくなる。 快斗はホッと詰めていた息を吐くと、自分もベッドへともぐりなおした。 新一は、昨夜遅くに帰ってきた。 夜と言うよりは朝と言った方が近いかも知れない。 とにかく、帰ってきたのは極々遅い時間だった。 例に漏れず警察からの呼び出しだったのだが、それが平日の呼び出しだったことに問題がある。 その日も学校があったが、もちろん今日も学校がある。 それでも断わったりしないのが、名探偵、工藤新一なのだ。 朝、低血圧の彼を起こすのは快斗の日課である。 朝食を用意し、彼の好きなコーヒーを用意し、学校に間に合うよう時間を見て起こしに行く。 それを習慣にしてしまったせいか、新一は快斗が起こしに来るまで安心して眠るようになった。 今まではどんなに事件で疲れていても、遅刻しないよう、翌日は自力で目覚めなければならなかった。 朝に弱い新一は、そんな日はなかなか眠れずにいた。 寝不足気味のまま学校に出て、事件に呼び出され、また寝不足になる。 そんな悪循環で彼の体は随分疲労していた。 そんな時に現われた快斗の存在は、新一にとってかなり有り難いものだったのだろう。 新一は昨夜、ほとんど寝ていない。 それでもきっちり学校へ行こうとするものだから、快斗は自分も寝坊することでそれを阻止したのだ。 せめて睡眠はしっかり摂ってもらわなければ、またいつあんな状態になってしまうかわかったものじゃない。 ……あの時から、彼と共に暮らし出したのだ。 パトカーのサイレンと群がる野次馬、それを規制する警官の姿。 何があったかなど一目瞭然だ。 ここで何かしらの事件が起こったのだろう。 その日快斗は、数日後に行われる宝石の展示会の下見に来ていた。 あまり大きくもない美術館は来たこともないので、脱出経路や進入経路を決めるためにも一度は来ておかなければならなかった。 だからほんの偶然で、その日、快斗はこんな場所まで来ていたのだ。 怪盗なんてものをしているせいばかりではなく好奇心の強い快斗は、けれど野次る気にもなれず、遠目に眺めながら通り過ぎようとしていた。 何より報道陣の気性荒く蠢いているあの人だかりに、わざわざ入って行きたいとは思わない。 けれど。 黄色いテープが張られ、点々と突っ立っている警官の合間。 一瞬見えた人影に、快斗は瞠目していた。 青い警官の制服の中、浮き立った白い存在。 未だ新聞紙上を賑わせ続ける、誰もが認める名探偵。 高校生ながらにその頭脳は、IQ400と昔騒がれた自分にも劣らない少年。 工藤、新一。 彼がひょんなことから小学生となってしまった時から、正確にはそれ以前だが、快斗は要注意人物としてその人を良く知っていた。 けれど、今、この黄色いテープの向こうに立つ姿は相変わらず凛としているにも拘わらず。 快斗には今にも泣き出しそうな表情をしているようにしか見えなかった。 制服のブレザーを来ていない。 彼は白いシャツにも負けない白い肌を晒している。 その表情はいつもと変わらないポーカーフェイスだと言うのに。 快斗には、見えないはずの涙が見えていた。 ショックだった。 彼の名探偵が、自分と力を対等にする男が泣いているからではない。 涙も流さずに、心だけで全身で泣き叫んでいる姿が、ひどく哀しくそして危うかったからだ。 気付いたら、入りたくもないと思っていた報道陣の中に押し入っていた。 彼らより一回り小さい体で難なく通り抜け、彼の腕を掴んでいた。 その腕は、新聞で見かける自信に満ちた表情に反して、細く頼りなかった。 けれどそこに確かな温度があることに安心して、快斗はただ無言で新一を連れてその場を離れた。 見ず知らずの自分に手を引かれるなんてこと、彼が受け入れるはずもないと思っていた。 それなのに彼は黙って引かれるままに歩き、快斗が止まると足を止めた。 振り向けば、蒼い瞳がじっと見つめている。 どんな悪意もこの瞳の前では無力となってしまうに違いない。 快斗はそんなことを考えていた。 悪意を持ってこの瞳に映されたのなら、その悪意は自分へと跳ね返って来るに違いない。 目前で仰いだ彼の表情は、様々な感情が押えきれずにところどころ飛び出してしまっているようだった。 疲れ、苦しみ、悔しさ、怒り、哀しみ…… 何が彼をここまで追いつめているのか、快斗にはさっぱりわからない。 けれど何より強い感情、哀しみが、彼を泣かせているのだけは見えていた。 抱き締めた体は思ったよりもしっかりとしていた。 それに安堵したと同時に、少し哀しくもなった。 下手に強い体に守られているために、彼は涙を流すことが出来ないのかも知れない。 その体に守られる魂は、ひどく脆くなってしまったのかも知れない。 快斗は、その脆い魂を放っておくことは出来なかった。 ただ単に側にいたかっただけかも知れないが、今ではもう本当のところはわからない。 ただ、この日から、快斗は彼と共に暮らしだしたのだ。 その日からどこかへ行ってしまった新一のブレザーは、後日警察から帰ってきた。 いち早く事件を解き明かして現場へ向かった新一は、幼い少女の遺体の第一発見者となった。 痛々しい、全身傷だらけの少女の体には、警察が到着したとき、青いブレザーがかけられていたと言う。 新一が何に苦しみ、何に怒り、何を哀しんだのか。 快斗は願ったわけでもなく、流されたニュースにより知らされた。 * * * 「新一って泣かないよね」 呆れたような声で言われた蘭の言葉に、新一はなぜかドキッとした。 蘭の言葉が、彼の言葉とデジャヴュしたからだ。 新一はまるでなんでもないような顔で、目の前に座って自分の手当をする蘭を見つめる。 「…男が泣いたら格好悪ぃだろ」 人差し指に出来た小さな一筋の傷を、蘭は丁寧に治療してくれている。 消毒し、傷薬を塗り、ガーゼを当て、最後に包帯で巻いてくれる。 包帯を巻かれるほど大した怪我ではないのに、なぜこんなに丁寧に治療するのか新一にはわからなかった。 ムッとして言い返した新一に、蘭は苦笑して言った。 「そう言う意味じゃないんだけどね」 「?…ならなんだよ?」 「私、今までずっと新一と居たのに、新一の泣いてるとこなんて見たことないんだよ」 これで良し、と蘭が新一の手を放す。 美術の時間に男子生徒が誤って吹っ飛ばした彫刻刀が、たまたま新一に命中して怪我をしてしまったのだ。 すぐさま蘭に連れられて、大したことねえのにと文句を言いながらも保健室に来ていた。 ふたりは授業に戻ろうと保健室をあとにしながら話している。 「ね、新一」 蘭は両手を後ろ手に組んで、怒っても笑ってもいない表情で話しかけた。 「男の子が泣いちゃいけないなんて、誰が決めたの?」 「こんなちっちぇー傷で泣いたり出来ねぇって」 「違うよ。そう言うことじゃないんだって」 新一には蘭の言いたいことがわからない。 なぜ蘭がこんな話をしているのかもわからない。 ただ、違うと否定されたから、蘭の次の言葉を待っている。 「お父さん、泣いてたの」 話がいきなり別方向に飛んでしまったように感じたが、新一はただ黙っていた。 「お酒入ったり、怪我したりしたら泣くけどね。そういうのじゃなくて…泣いてるのを、見たことあるの」 「そう言うのじゃなくて…?」 「お母さんが出て行ったとき」 新一はぐっと言葉に詰まって、視線だけを蘭に投げていた。 蘭は相変わらず落ち着いた表情で話している。 新一は、蘭がずっとふたりを仲直りさせたがっていることを知ってる。 平気そうに話していても、両親が別居状態であることを哀しんでいると知っている。 「お父さん、私の前ではお母さんのこと悪く言ってばかりだったけど。一度だけ、本気で泣いてるのを見たことあるの」 有能な弁護士であることは、ある意味では人の恨みを買う仕事ということである。 裁判で彼女に負けた者の親族が、逆恨みで彼女を襲ったことがある。 大事には至らなかったが、それでもその時側にいなかったことで守れなかった自分自身を、小五郎は責めた。 責めて、泣いて、けれど元に戻らなかったのは……妻を思ってのことだ。 自分が襲われたからと、夫に責任を感じて元の鞘におさまることを、彼女が望んでいなかったからだ。 その時のことを、蘭は鮮明に覚えている。 「お父さんが泣いたのは、お母さんが大好きだからよ。大事で、失えなくて、愛してるから本気で泣いたの」 だから、子供の我侭で困らせることは簡単だったはずなのに。 泣きわめいて仲直りしてくれとは、言えなかったのだ。 「新一はなんで泣かないんだろうね」 「……本気で大事な人がいないのかって言いたいのか?」 けれど蘭は、ううんと首を横に振った。 「新一はね、みんなみんな大事にしすぎなんだよ。それこそ、殺人犯だって、大事にしてる」 新一は思わず眉を寄せて蘭を凝視した。 なぜ彼女がそんなことを言うのかわからない。 なぜ自分が、殺人犯までをも大事にしているなどと言うのだろうか。 「なんで俺が殺人犯なんか大事にするんだよ」 もう一階上がれば美術教室が見えてくると言うとき、階段の踊場で蘭がぴたりと止まった。 相変わらず腕を後ろで組んだまま、ピンと背を伸ばして立っている。 新一も蘭に合わせて止まった。 「じゃあなんで、新一はそうんなに犯罪を嫌うの?」 「なんでって…好きなやつはいないだろ」 「嫌う人だっていないよ。新一みたいに自分から関わっていく人なんかいないよ」 考えてもみてよ。 犯罪なんか、自分が関わらなかったら遠い世界の出来事で、それに関心を持つ人なんていないよ。 「なのに新一は、事件となったら真っ先に向かって行っちゃうよね」 新一は言葉に詰まった。 絶句したまま、一言も発することが出来ずにいる。 確かに事件とくれば、学校だって親だって友達だって、みんな放って向かってしまう自覚があった。 目の前にいる良く知っているはずの幼馴染みが、まるで知らない人のように感じる。 「お母さんが子供を叱るのは、愛してるからよ。新一が犯罪を憎むのは、犯罪を犯す人たちを見捨てられないからよ。大事にしてるから、憎むんだよ」 なのに、なんで新一は泣かないんだろうね。 新一が何も反論できずにいると、蘭が先を続けた。 新一の答えられなかった答えを、蘭が哀しそうな声で言う。 「新一はホームズだから泣かないんだよ」 「ホームズ……」 「昔から大好きだもんね。こんな探偵になるんだぁーって。良かったよね。…そんな探偵になれたんだから」 ホームズは犯人を断罪する時に、泣いたりはしない。 どんなに卑劣な事件を目の当たりにしても、泣いたりはしない。 殺人犯を前に、泣きながら事件を解決したりは、しない。 「ホームズは泣いちゃいけないの?」 「…………」 「完全無欠の探偵なんて、必要なの?ホームズが泣いちゃ、どうして駄目なの?」 それまで背中を向けていた蘭が、黙りこくっている新一を振り向いた。 その顔は意外にもにっこりと笑っていた。 蘭の向こうから差し込む光が、なんだか眩しいような気がする。 新一は瞳を眇めた。 手当てした手を蘭の手がそっと掴む。 「怪我したら、手当が必要だよ。どんなに小さい傷でも、放っておいたら大変なことになる。それは心も同じでしょ?」 「…蘭」 「泣くってのはね、心のケアなんだよ。だから新一も泣いたら良いよ」 「蘭」 「私じゃなくても良いから…誰かに肩を貸してもらってさ」 「――蘭。」 笑っていた顔がくしゃりと歪む。 彼女もまた、哀しみを堪えてたのだと漸く気付いた。 思ったよりも切羽詰まっていた自分に、新一は苦笑してしまう。 「蘭。…サンキュ」 「……あんまり心配かけないでよ、ばか」 色の違うブレザーを着た新一。 なぜ違う色のブレザーを着ているのか。 ニュースを見ていれば、知らない者はいない。 べっとりと付いてしまった血は、もう取れることはなかった。 新一は新しいブレザーを買うしかなかった。 新しい物が届くまで、新一は違う色のものを変わりに着るしかなかったのだ。 泣いてしまった蘭をそのまま教室に連れて行くことも出来ずに、結局ふたりは美術の時間は戻らなかった。 階段に腰掛けて蘭の肩を抱きながら、新一は考える。 自分に肩を貸してくれるような物好きは、いるのだろうか、と。 脳裏に一瞬過ぎった白い影に、新一は気付かないよう蓋をした。 |
TOP * NEXT ------------------------------------------------------------------------------------------------ 表に全然置けるんだけどね。次にウニャウニャを入れるから裏行きです。 ……中途半端だから、次も書いてからアップにするか…。 慟哭ってすっげー哀しい響きだよね。 いつかこのタイトルで書くぞー!と思ってましたが。案外に早かったです。 では、レッツ後編→! |