広大な宇宙…世界には
様々な生き物がいる
あそこの世界では魔物が存在している
ここの世界では生き物は存在しない
そういった世界や生き物が沢山ある
主に存在しているのが人間
天使や悪魔も主に存在している
知っていますか?
天使や悪魔は、私達人間の近くに意外といるのです
ただそれを、人間は信じていないだけ・・・
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堕天使の祝福
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7月の夏。
真夏日の中、白い衣装を着た『魔法使い』『月下の奇術師』…怪盗キッドが今日も夜の中、飛んでいた。
今回の宝石もハズレで何度目かの溜め息を吐く。
「今日も名探偵いなかったな・・・」
名探偵…工藤新一を知らない者はいない。
老若男女に人気があり、とても整った顔をしていて、どんな迷宮入りの難事件も解く名探偵。日本の救世主と呼ばれている。
驚いたことに、キッド(快斗)と新一は顔も声もそっくり。
しかし、新一の方が体が細く、かっこいいと言うよりも、綺麗で可愛い。
快斗は体を鍛えているから、たくましく、かっこいい。
そんな快斗が新一を好きになってしまった。という驚くべき事実。
「叶わぬ恋だとは分かっている。」
マリンブルーの瞳に宿る強い光と悲しみの光。
結ばれてはいけない恋。
平気ではいられない。
自分の隠れ家に着くと、ハングライダーを畳む。
パチン
指を鳴らせば、あっという間に私服の快斗に戻る。
ポケットから鍵を出し、自分特製の鍵穴に差し込む。
「・・・!!」
微かだが、自分の隠れ家の中から、人の気配がした。
この隠れ家は母親と寺院しか知らない。
(バレたのか・・・!)
気配を消して、家の中に入る。
トランプ銃と拳銃を出す。
荒らされた跡はなし。
一部屋ずつ、組織の人間がいないか、荒らされた跡はないか。確認していく。
元々暗闇でも目がきくので、見える。
今のところ、気配がするのはリビングだけ。
先ほどからまったく物音も動く気配もしない。
次々と部屋を見ていく。
残されたのは、リビング。
ドクン
一歩ずつ、慎重に歩く。
つーと汗が自然にでてきた。
ドクン
キッチンの横を通る
ドクン
リビングの中央
ドクン ドクン
ソファの横で立ち止まる
ガチャ
トランプ銃をソファにいる奴に向ける
ピクリとも動かない
「・・・・・・・・・違‥う」
スゥ スゥ スゥ…
そこにいたのは、組織の奴ではなく
ソファに横になって、白いバスタオルを体にかけて寝ていた…
「名・・・探偵・・・?!」
まさか、名探偵…新一だとは思わなかった。
闇夜の中白い月が新一を照らし、
白いバスタオルが羽のように見えて
天使かと思うぐらい、綺麗だった。
見惚れながらも、予想外のことに、ただ呆然としていた。
「な、何で・・・?」
まさか、自分の隠れ家がばれたのだろうか。
「名探偵だったら、ありえるな・・・」
自分を捕まえに?
そうなる前にここを出ようとすると、何かに引き止められた。
名探偵かと思っていたら、その通りだった。
「ん・・・・・」
ネコのように、目を擦りながら起きた新一。
はだけた服から覗く、白い肌。
左手は快斗の服の端を掴んだまま。
「おかえり。キッド・・・ん?快斗か・・・?ま、どっちでもいいか」
うとうとしながら、とろんとした目で、快斗を迎える。
「・・・・・・ただいま」
と言うと、新一がにっこり笑った。
おかえり。と言われたら、ただいま。と言うしかなかった。
「どうかしたか?」
「え?・・・いや、何でもないです」
慌ててキッドに戻る。それを見た新一がクスクス笑ってた。
そういえば、名探偵は綺麗な表情で笑ったのを
あまり見たことないな…。
「そんな、キッド口調に変えなくていい。
お前のこと知っているから。いいだろ?快斗」
快斗は驚いて、しばらく考えこんだ。
「・・・・・・何で、俺のこと知ってるの?
俺を捕まえないの?」
「捕まえてほしいか?」
何時もの探偵の顔で言ってきた。
捕まるのは嫌だけど、新一の近くに行っていいかな?隣に。
「いやいや、捕まるつもりはないよ。
それより、さっきの質問に答えてくれない?」
快斗は新一の隣に座った。
「そうだよな・・・覚えているわけないよな・・・」
新一のその小さな声は、 聞こえないほどの小さな声で呟いたのに、何故か快斗には分かった。
「覚えてないって・・・俺、何かあった?」
「お前、聞こえるのか?!」
(今まで、誰一人分からなかったのに・・・)
それから沈黙がながれた。
新一は自分の知らない何かで苦しんでいる・・・・・・そんな気がした。
・・・そんな気?・・・・・何かを知っている。
そう、自分は何かを知っているんだ。
「・・・・・・お茶持ってくるね」
そろそろ口が乾いてきたから、お茶を作ることにした。
俺はココア・・・っと。
「新一はブラック・・・」
コーヒーを取ろうとした快斗の手がぴたっと止まる。
「何でコーヒー?」
何の迷いもなしでコーヒーをいれていた。
新一が何を飲むかも知らないのに……。
昔から、新一を見ていると、新一を知らないはずなのに何故か新一のことが分かった。
そして、一瞬見る、新一の小さいころの姿。
これを見たあとは何時も頭痛がした。
今も頭痛が酷い。
「快斗・・・?」
はっ
固まった快斗を呼ぶ新一。
額には汗がでていた。
「快斗、大丈夫?」
「だ、大丈夫。新一は何を飲む?」
ポーカーフェイスを何とか保って、新一に聞く。
「・・・何を飲むって、もう入れてあるだろ。
・・・俺がコーヒー好きだってことよく分かったな・・・。」
しまった
新一に悟られないようにしていたのに・・・。
俺が失敗するなんて・・・。
「いれてくれてサンキュ♪」
そう言って、コーヒーを持っていった。
コト
「新一。俺の問いに答えてくれる?」
コクン
頷いた。
「何で俺のこと知ってるの?」
「・・・・・・お前は今、記憶をなくしてる。
それは小さいころの記憶。」
「何言って・・・」
「盗一さんの言葉。覚えてるだろ?」
父さんの言葉。
夢の中で何時も聞く、小さいころの俺。
『いいかい?快斗。今からゲームをするからルールをよく聞いてほしいんだ』
『何のゲーム?シンもやる?』
『新一君もやるよ。ルールは、今から快斗は新一君と一緒にいた日々の記憶を消す。
そして、記憶のなくなった快斗が新一君とまた出会えたら、新一君と一緒にいることを認める。』
父さんの言ってる新一が今俺の前にいる新一なのかは分からない。
だけど、『シン』は今前にいる『新一』だと思う。
「少しずつ、思い出していけばいい。
何故俺がお前を知っているのか。謎が分かるはずだ。」
「・・・・・・シン?」
ぴく
新一の体が反応する。
「新一は・・・シンなの?」
「・・・・・・」
「答えて。」
「・・・お前は真実を知らない。」
答えてもらえるかと思ったら、いきなり不思議なことを言い出した。
「真実を知らないから、教えることはできない。」
「じゃあ、何時になったら・・・。」
「真実を知ることができたら。」
ここは俺が折れた。本当は知りたいけど・・・。
いれたばかりなのに、ココアが冷めていた。
「・・・お前は、天使や悪魔を信じるか?」
「はあ?」
今度はこれ?
天使や悪魔って・・・・・・普通は信じないでしょ。
「かの名探偵が天使や悪魔を信じてるの?」
「いいから、どうなんだ?」
新一が探偵という言葉に疲れを抱いているらしい。
嫌な顔されたし。
「そりゃあ信じてないさ。」
「そう、大抵の普通の人間はそうだ。
天使や悪魔、天国や地獄など存在しないと。
だが、この世界に本当に人間や動物だけが存在してると言い切れるか?
天使や悪魔だって存在してるかもしれない。人間が言う天国だって、ない。と言い切れるか?」
『人間』や『天使や悪魔』。
聞いているとまるで、新一が人間ではないと言っている感じがする。
快斗は冷めたココアを一口飲んだ。
「・・・・・・」
「だろ?この広大な世界に人間や動物だけが存在しているのではなく、
天使や悪魔だって身近にいるかもしれないじゃないか。」
新一の言うことはもっともだと思う。
でも、突然言われて信じられるはずがなかった。
「信じるのは難しい。それが本当なのか嘘なのか、見極める必要があるから。
だから、信じるのは遅くでもいい。いずれ、嫌でも信じるときがくる。」
サアア
冷たい風が二人を包む。
まるで、これから起きそうなことを伝えるかのように…。
天使や悪魔
快斗の頭にそればかり響く。
いったい、何が天使や悪魔と関係するのか。
「実物を見せたほうが信じやすいよな」
そう言うと、カップを置いて、リビングの広い所で止まった。
「信じられないかもしれない。でも、真実を知りたいだろ?」
「・・・・・・真実を知りたい」
快斗の目に光が宿る。
ー 昔の記憶を『シン』を・・・真実を・・・・・・ ー
快斗の言葉に微笑みを浮かべる。
(今度は大丈夫だよな・・・・・・カイ・・・)
「・・・分かった。
少し風がでる。大切なものとか気を付けろよ。」
新一が手を合わせ、呪文のようなものを唱えている。
「汝に忠誠を誓い.汝に心を.我に情けと力を.
ー神の裁きを下らんことを!!」
「っ?!」
新一の口から発せられる゛音 ゛
それは、体がピリピリする、魔力の大きさ。
しかし、快斗は知らない。直に知ることにはなるが…。
ビュオオ
部屋中に凄い風が吹き、家中の電気が消えた。
雷が落ちたかのように、突然。
「なっ?!」
「大丈夫だ。終わったら点く。」
そう言って新一は次に、ナイフを取り出した。
小ぶりだが、刃は鋭く、刺されたら病院・・・いや、あの世行きだろう。
ナイフには何やら文字が書いてあったが、読めなかった。
「お前、血は平気か?」
「血?」
「そう。少し血を流すから。」
新一は指にナイフをつきつけた。
そして、すっと手前に引く。
すると、紅い鮮明な血が出てきた。
指から伝って流れる血。
「し、新一?!」
快斗が駆け寄ろうとしたが、新一に止められた。
「来るな。」
そして、自分の血を新一は飲んだ。
(飲んだっと言っても、少量だが。)
しかし、血を飲んだとたん、新一の様子が変わった。
自分の体を抱き、苦しそうな声を押し殺し、目が潤み、震えてた。
「新一!!」
新一の側に行きたいが、先ほど止められた為、行くにはためらいがある。
風が消え、部屋は新一の押し殺した声でいっぱいになった。
「っ・・・・・・かはっ・・・!」
口から吐き出された血。
それと共に、新一の背に人間にはないはずのものが生えていた。
「く・・・・・・」
「な…に・・・・・・」
驚いて言葉も出なかった。
新一の背に生え出てきたものは、綺麗な純白の翼と血の色がした赤黒い翼だった。
「ん・・・・・・は・・・」
徐々に出される翼。心の清潔さがする白。罪を犯してしまった赤黒い翼。
両方共、残酷でいて綺麗だった。
そして、大きな翼が現れた。
「はぁ…はぁ・・・はぁ・・・」
「っ!新一!!」
快斗が新一の側へ行き、手を包む。
俺より少し小さくて細くて綺麗な手。
「・・・・・・っ・・・・・・」
自分の手を包む、大きくて暖かい手。
痛みに顔を歪め、快斗の行動に驚く。
「新一、ごめん・・・。」
「・・・何で・・・お前が謝る・・・」
やっと呼吸が整い、快斗に顔を向ける。
「俺が真実を知りたいって思わなければ、新一がこんなことには・・・」
「堕天使は翼を出すとき、俺みたいに痛さに呻きながら出すんだ。
だから、謝ることはない。」
新一が快斗を安心させるように、微笑む。
「でも・・・・・・」
「大丈夫。な?」
快斗の手をぎゅっと握る。
「分かった。でもこれからは、
こういうことがあるんだったら最初に言ってね?」
「・・・約束する。」
ゆっくりと手を外し、快斗は新一の翼に触れる。
新一も目を閉じ、快斗のするままにしている。
「新一、この姿は・・・?」
新一に問う。
新一は自分の翼に触れながら、言った。
「・・・俺は神に背いた。だから今、こんな翼になったんだ。」
「・・・何をしたの?」
快斗が遠慮気味に聞く。
新一は瞳を潤ませ、快斗の服の裾を掴んだ。
「・・・人間と関係を持った。」
「・・・誰?」
白い手が更にぎゅっと握る。
その綺麗な蒼から涙がこぼれ落ちそうだった。
「俺の・・・・・・大切な・・・大切な人。」
新一の頭によぎる、『カイ』の姿。
切なすぎて、快斗を見れない。
「・・・・・・カイ・・・・・・」
小さな口からでる名前。
誰なのか分からないけど、新一が凄く大切にしている人だとは思った。
「・・・新一」
ぎゅっと、新一を包む。
新一は快斗の行動に驚き、目を見開いた。
「『カイ』じゃないけど・・・・・・今は泣いていいよ。」
「かい…と…」
快斗の腕の中で震える体。
声を押し殺しているのだと、思った。
T / N
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白さんから頂きました、相互リンク記念の小説でございますvv
しかも長編でございます!!
有り難いと同時に何のお返しもできていないのでちょっと申し訳ないのですが…
とにかく(…)!堕天使新ちゃんにドキドキですvv
まだまだこれからといった感じで先が楽しみですねvv
今回は三話一挙に頂戴してしまいましたので、早速次へどうぞ★
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