新一。あなたの家は本当にどうなってるんですか…。
一千万弱……って普通ありえないだろ…。
普通の家には普通ありえないだろ…。
「俺のお気に入りはこの剣とこいつなんだ。」
快斗の様子を知ってか知らずか、普通に言う。
新一が出したものは、新一の目と同じ色の綺麗な剣と、鳥らしき生き物だった。
「こっちの鳥みたいな奴は、不死鳥…フェニックスだ。」
……何だかアニメのポ〇モンみたい…。
「こいつらは、あくまでも俺の手伝いみたいなもんだ。
だから実際戦うのは俺だ。アニメじゃないぞ。」
新一に心覗かれること忘れてた…。
でも、凄いな〜。
堕天使って皆こうなのか?
「普通はこうではないな。俺はそういうの関係なし……でね。」
「ふ〜ん。」
何だか、新一が離れていくような気がした。
何だろ、胸騒ぎがする。
快斗は不安でいっぱいだった。
「…お前、どれにする?」
「ん〜……銃と剣にしようかな…。」
「じゃあ、これとこれでいいよな?」
新一が取り出したのは、シルバーのシンプルなデザインの銃二丁と弾、快斗の目と同じ色の剣。
その他にも、小道具な武器もあった。
「武器でも、少しは持ってたほうがいいからな。」
そう言って、快斗に武器を渡し、
新一は本棚の前に立って、本を一つ一つ見ている。
「快斗、この本読め。役にたつ。」
新一から渡された本は少し埃を被ってた。
表紙は全て白く、緑のインクで「Heaven」と書かれてあった。
一方裏は、全て黒く赤インクで「Hell」と書かれてあった。
「それはな、天と地の世界全てを書いた、貴重な書物なんだ」
「ふ〜ん…」
パラパラと目を通す。
書かれている文字は、何かの文字らしいが
快斗には分からなかった。
「新一…これって、どこの文字?」
「それは、天の方は天界の文字で。
地の方は魔界の文字で、書かれている。」
新一も書物を読んでいた。
新一のは茶色の表紙でとても分厚かった。
「それは?」
「ん?これは、神話だ…」
新一が書物に目を通しながら言う。
ふと、真剣に目を通す新一を見つめる。
クセのないサラサラの髪に、光を失わない蒼。
線の細い体に雪のような白い肌。
「どうした?」
「うわっ!!」
何時の間にか目の前にいる新一。
見惚れていたから気付かなかった……
「新一は綺麗だな〜ってv」
「アホか」
「本当だよ〜」
冷たくあしらわれるけど、本心じゃないってとこが
また可愛いんだよね〜
「聞こえてるんだよアホ」
「あ、聞こえてた?」
さっと身構える。
・・・・・・
あれ?
「何やってるんだ?お前」
そんなことやってる暇があったら、早く読め
「だって新一が蹴ってくると思ったから。」
「別にそんな簡単に蹴らねーよ。」
どうしたんだろ??
新一がこんなに優しいなんて?!
新一はそれだけ言って、書物をもう一度読み始めた。
快斗も、もう一度読み始めた。
「それにしても、中は綺麗だな〜」
『Heaven』からページをめくる。
すると、天界の文字で書かれていたページが、
白いすべすべとした紙に、黒い字は綺麗な草書体で書かれている。
For God loved the world so much that he gave his only son …
「神は、その独り子をお与えになったほどに、
世を愛された…。
福音書?!」
Then I saw another sign in heaven, great and marvelous:seven angels having the seven last plagues,
for in them the wrath of God is complete.
「これって……」
We give You thanks, OLord God Almighty,
The One who is and who was and who is to come,
Be-cause You have taken Your great power and regned.
The nations were angry, and Your wrath has come,
And the time of the dead, that they should be judged,
And that You should reward Your servants the prophets
and the saints, And those who fear Your name,
small and great, And should destroy those who destroy
the earth.
な、何で……?これが…真実?
「ねえ、新一。これって……一体どういうこと?!」
快斗がわなわなと体を震わせた。
……暗号が解けてしまった。
嘘で塗り固めたことが無くなり、真実がみえる。
「……書かれているとおりだ。」
「そんなこと……こんなことが、あっていいわけが無いっっ!!」
本当は信じたくない。認めてしまったみたいで、嫌なんだ…。
がしっと肩を掴む。新一の口から悲鳴が漏れる。
その声も、今掴んでいる肩も
「ぃ…っ!」
「何で新一なのさ?!
新一が生まれてきちゃいけない理由なんて……!!」
解けてしまった暗号。
そこには真実が書いてあった。
『神はその独り子をお与えになったほどに、世を愛された。』
その「世」が新一のことである。
つまり、新一を愛しているから独り子をお与えになった。
『天にもう一つの大きな驚くべきしるしを見た。
七人の天使が最後の七つの災いを携えていた。
これらの災いで、神の怒りがその極みに達するのである』
神が新一を愛してしまった為に、起きた災い。
神の怒りがその極みに達する。
『今おられ、かつておられた方、全能者である神、
主よ、感謝いたします。
大いなる力を振るって統治されたからです。
異邦人たちは怒り狂い、あなたも怒りを現された。
死者の裁かれる時が来ました。
あなたの僕、預言者、聖なる者、御名を畏れる者には、
小さな者にも大きな者にも報いをお与えになり、
地を滅ぼす者ど もを滅ぼされる時が来ました。』
新一は神に属していた。報いを受けるが、
消すことのできない罪を犯してしまった。
だから、破滅が待っている。
しかし、神が新一を失うのを恐れ、
新一を堕天使として生かした。
「自分が生まれてこなければ、こんなことにはならなかった。
って思っているでしょ。」
そして、周りの者も言ってるんだ…。
新一が犯した罪は、人間『カイ』と関係を持った。
ってことだろうな…。
「だって、事実じゃないか?!
俺がいなければ、セイやリョウは……快斗だって……」
「そんなの分からない!
俺は、新一に出会えたこと…
新一が生まれてきてくれたことに、感謝してる。」
だから、もうそんなこと言わないで……。
「ありがとう。快斗」
新一は快斗の手をとった。
サアァァァ
途端に、冷たい風が二人の肌を刺激した。
「何で何時も、いいところで邪魔するかな〜」
「せっかく、調べていたところなのに…」
何だか、2人共考えていることがずれている……。
「どうも、こんにちは」
「また来たぞ。」
再び、暗闇に覆われた屋根裏。
そこに浮かぶ2人の影。翼は出していなかった。
「別に、来てもらいたいと思ってないですが」
「今日はお前に用があるんだ」
俺?と快斗が笑う。
前回と違う快斗に、リョウの眉がぴくっと上がる。
「任務でしてね。」
セイがニコリと笑みを浮かべる。
…その笑みが偽物でなかったらいいのに。
快斗と新一二人が同時に、思う。
「まあ、そういうことだ。大人しく捕まれ。」
「俺がyesと言うと思うか?」
「思いません。」
新一は、傍で見守ることしかできない。
「分かっているなら、聞かなければいいじゃないか」
「一応だ。お前が怖がって言うこと聞くかもしれないだろ?」
お互い相手を挑発しあっている。
笑みを絶やさない。
「あ〜俺、こういうの駄目なんだよな〜。」
「もうですか。」
「だってつまんねーじゃん。力でやったほうが楽しいぜ。」
紅翼・白翼、剣が懐からゆっくりと、静かに現れる。
息をのんだ音がした。
「どうする?最後に聞く。」
「答えは変わらない」
「そうか。じゃ、力づくでいかせてもらう…」
言葉が終わらないうちに、リョウの姿が消える。
「快斗っ!気を付けて!リョウは、力もスピードも速い!」
新一が快斗にそれだけ言って、セイの方を向いた。
「新一も気を付けてっ!」
し…ん
時々、風の音が聞こえるぐらいで、嫌なほど静かになった。
どこからくるっ?!
そっと目を閉じて、気配を探りながら落ち着かせる。
「どうした?もう動けないのか?」
くっくっ
喉で笑う声が、部屋全体から聞こえたように思えた。
「っっ?!!」
ガスッ!!
剣が上から降ってきた。
リョウも一緒に、その場に降り立った。
「おいおい、もっとやれるかと思っていたのにな……」
ワザとらしく息を吐く。
快斗はさっと、トランプ銃を構える。
「強いかどうかなんて、やってみないと分からない。」
リョウが喉で笑う。
「お前は本当に分かってないな…。」
「何をだ」
リョウがふわりと飛んだ瞬間、消えた。黒い衣は暗闇にまぎれた。
「お前が、シンを守りきれる。と本当に思っているのか?」
「何を言って…」
キラリ
ザシュッザシュッ
光った場所から、鋭い細い矢が飛んできた。
それを上手く交わし、気配のする所へトランプ銃を放つ。
「そうじゃないか。
前回だって、俺達から守りきれなかっただろ?」
「あれはっ…」
ガスッ
もう一度、快斗のいる場所に剣を振り下ろす。
パシュッ パシュッ
快斗がリョウに向かって放つ。ためらいがあるが腕へ。
リョウは避けることなく、そこに立つ。
「だから甘いんだよ」
リョウのせせら笑いが響く。
スッ
リョウの腕を狙ったトランプがリョウに難なく、捕まる。
「なっ?!」
「俺がこんな紙切れに殺られるかよ」
トランプがリョウの手の中で、グシャグシャにされ、
最後にはリョウの出した炎で消えた。
「俺を殺す気でこないと、死ぬぞ」
快斗の背中は冷汗で濡れていた。
B / T / N
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