「お届けモノです」

 花束を持った配達員が、にこやかに微笑んでいる。
 甘ったるい、濃厚な匂いが玄関に広まった。 

「はい?」

 素っ頓狂な返事になるのは仕方ない、こんなの受け取るの初めてだ。
 間違いじゃ無いのかと、疑いたくなるが・・・。
 

 確かめてみれば、俺宛で間違いないし・・・。

 
「ありがとうございましたぁ―」


 やけに明るい配達員に、新一は呆然とドアが閉じるのを見守って。


 添えられているメッセージカードに、気がついた。


「・・・・・・キザ・・・・」


 まったく、アイツらしい・・・。 
 鈴蘭には、困るがな・・・・。


 『優しい思い出になりますように、K』




「・・・ホント、アイツのは『治療』だったんだよな・・・・・・」 


 その後、ジンに助けられたんだ。
 順番が逆だったら、どーなっていたのか・・・。



 何時の日か、『優しい思い出』になるのだろうか・・・・・・。




















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渇愛
writteen by puchan

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 まぁ、KIDは放置してても問題は無い。
 無害とは言い切れないが、アイツの嫌がることはしないだろう。

「そうなると・・・」

 問題は、この二人だろう。

 白馬探と服部平次・・・二人とも父親を警察の上部に持つ身だ。
 高校生であるにも関わらず、探偵をしているらしい。

 いい噂は聞かない、というよりも、アイツが別格なのか・・・。

 ちょっとできる程度、なはず。



「どーしてやるかな・・・・・」



 アイツにした事を後悔させてやろうじゃねぇか・・・。

 お前らがソレを起したからこそ、俺がアイツとこういう関係になれたのだとしても。
 感謝の気持ちなど、持ち合わせていない。


「・・・あのガキ、何か出来そうだな・・・・・・」


 話を持ちかけてみるか・・・。

 
 過去は捨ててる、それはあのガキも同じだろう。
 
 大事なのは『今』・・・。
 自分はもう、『工藤新一』以外に・・・何も欲しくない。

 









「昨日だったかしら、彼方の恋人に逢ったわよ」 

 鈴蘭のお裾分けを貰いながら、哀は告げた。
 
「ふぅーん・・・」 

 変わっただろ?との無言の問いかけに頷くしか無い。
 本当に、ナニがここまで彼を人間臭くさせたのかと・・・思ったほど。 


「・・・彼、彼方を陵辱した相手を許すつもり無いわよ」

「・・・殺人はしないだろうけど?」

「・・・・・・・・・・・」


 簡単に語る新一に、哀は賛同する。
 それだけは、確実に言える事だから・・・。


「白と黒のバカでしょ、彼方を・・・したのって」

「そうだけど?」

「私も、それなりに考えているから」


 ああ、私と彼がタッグを組んだら最強じゃない?


 とんでもない事を言い出した哀に、新一は微笑んだ。

 哀の優しさが、嬉しかったから・・・。





 





 気になるデータに、快斗はキーボードを打つ手を止めた。
 食い入るように見つめているそれは、水面下での作業の様だが・・・公になれば・・・・。

 コイツらは、絶対に『彼』を取り込もうとする。

 TOPに立てるからと・・・。


「・・・・・大人しく、潰れていればよかったのに・・・・・・・」



 八つ当たり、しようかな・・・。


 それとも・・・・・・・・・・・・


 ああそうだ、それがいいかな・・・。




 くくく・・・・・。


 楽しい事を思いついたように、快斗は作業を再開し始めた・・・。













 飢えてる自覚はある、その場凌ぎの女相手にでは役に立たないから。

 この渇きを癒せるのは、彼だけだろう。
 あの崇高な魂と肉体だけ・・・。

 
「・・・我慢、できへん・・・・・・」


 欲しいなら、俺らが幾らでも抱き壊すと言うのに。
 何故、あんなヤツを迎え入れる?

 その両足を開いて、強請る?

 俺らにだけ、そうしていれば良いと言うのに・・・・。
 
 物好きというか、堪え性のナイヤツや。
 


 電話を取り、コールの先に出た相手に服部は提案を持ちかけた。


 二つ返事で返答を寄越した相手に、後日なと告げる。






 また、享楽を開こう?



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