馬の代わりに盛大に・・・蹴ってあげましょう。
私にも思うところはありますし、何よりも名探偵を一番初めに貶めた彼方達には。
とっておきの痴態と恥をさしあげますよ?
ええ、最後の仕上げは『彼』に任せるとして・・・。
くすくすくす・・・と、KIDは盗聴器から伝わってくる言葉に笑い続けていた。
だから、彼方達は『探偵』でしかありえないのだと・・・。
得た情報によって赴いた場所はもぬけの殻で、服部と白馬は面食らっていた。
一体どうして、信じられないと互いに顔を見合わせてしまう。
「・・・・」
「此処で、あっていたんですよね?」
「そーや、間違いはあらへん」
情報通り、地図に間違いも無い。
「だとしたら、情報が間違っていたのでは?」
考えたくも無いですが、ガセネタ?
「んなはずは・・・」
あらへんと、否定しようとした服部は。
見上げた視界の先に、しろっぽいモノを見つけた。
「・・・・・・・・・・KID・・・・・・・・・・・」
ひくり・・・と、白馬が呟いた。
何故、こんなにも威圧感を感じるのか。
今までだって、何度も対峙したはずなのに。
服部に至っては、KIDを凝視し続けるしかない。
ナニがどうなっているのか、さっぱり掴めてなかったから。
「こんばんわ、迷探偵殿達」
此処に来るまでに、覚悟はあったんでしょうね?
にっこりと微笑むKIDに、二人は逃げ出したい衝動にかられていた・・・。
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渇愛
writteen by puchan
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立ち込める硝煙の匂いは独特で・・・新一はピクリ・・・と身じろいだ。
ナニが、あった?
視界に映るのは、かび臭い床。
痛いのは体中で撃たれた箇所は増えてない、身体に衝撃は無かったから・・・。
今の、なに?
サイレンサー・・・付きの、銃?
「・・・・そんなに、以外だったのか?」
お前らにとっては、俺が銃を向けた事が・・・。
眉間を狙った、だから暫くは起きないだろう。
命に別状は、たぶん、ナイ。
可能性は五分・・・それにしても、タイミングを合わせてガキも発砲するとはな・・・。
想いに耽ったのは一瞬だったが、ジンは身じろいだ新一に気付く。
「気付いたか?」
もんどおりを打って倒れた男達二人には目もくれず、ジンは床に蹲ってる新一を抱き上げた。
視線で促せば、何処に潜んでいたのか哀が飛び出してくる。
カチャリ・・・と、小銃をポケットにねじ込みながら。
「・・・ジン?」
間違い、ナイ?
「ああ、安心しろ。もう平気だから」
悪かったな、こんな事に巻き込んで。
俺達の残党が残っていたとは、知らなかった・・・。
傷を全て調べた哀は、此処じゃ応急処置すら難しいと判断する。
「戻りましょう、此処じゃ何も出来ないわ」
酷い有様だわ・・・医者に連れて行ければ良いけど。
公になったら困った事になりかねないもの・・・。
「先にいけるか?」
コイツらをこのままに放置してはおけないのだ。
生かしておくべきではない、次があるならば、暗殺者としてくるだろう。
「・・・工藤君を外まで運んでくれるなら可能よ、博士に連絡をつけられるから」
解った・・と、ジンは短く答えた。
カツンカツン・・・と、足音が近づく。
逃げ出したいのに足がすくんで動かない・・・それをみっともないとは思わなかった。
そういう余裕すら、ないのである。
普段は足音すら立てない怪盗が、意図して出しているのはわかってる。
だからこそ、怖いのだ・・・。
「な、ナニを怒ってるんや?お前も良かったんやろ?」
ワイは知ってるで、お前も工藤を抱いたやろ?
ワイと白馬が堪能した直後にか?
薬が残ってて、まだまだ欲しがっていたはずやし・・・。
カラカラになった喉から出たのは、そんな言葉で。
ギョッとしたのは白馬だ、今は無闇に刺激をするものではない。
「はっ、服部君っ・・・」
今の彼を怒らしたら、自分達に明日はなさそうだ・・・。
ポーカーフェイスが、震えてる・・・。
「強力な媚薬を用いたんですよね・・・お二人は、欲しがって強請るのは薬にする影響だったというのに。合意でヤったと言い張ったとか、柔らかな心を持つ名探偵がどんなに傷ついたのか知らないでしょう?」
みっともない姿を見られるならば、死んだほうがマシだと言わんばかりに。
あの日、路地裏に隠れていた彼。
見つかったときの絶望を称えた瞳が、わけも無く胸に突き刺さった。
本能と理性の狭間で苦しんでいた彼に、『治療』を施して・・・気付いた時に自分が居てはまた刺激する
だけだと判断して人通りの早い場所に置いてきた。
寒くないようにと、防寒をして。
ただ、雨ばかりは予期してなかった。
気になって行って見れば、既に彼は居なかったから・・・。
ゾクリ・・・・。
這い上がってくる恐怖感に、二人は思わず後に下がってしまう。
何かを踏んだような感触に、違和感を覚える間もなく・・・白い煙が一面を覆いだして。
「良い夢をご覧になってくださいね、私が強力にしておきましたから」
それ、改良してありますし。
「なぁ」
ナニを・・・。
「毒ではナイですよ、ただ・・・・ね」
命には影響無いですが、感覚に変化あるだけですよ。
ある程度の時間が経てば、助けがくるようにはしました。
まぁ、彼方達は気付かないでしょうが・・・。
八つ当たりであり、仕返し・・・。
十倍以上にして、返すのが礼儀。
用は済んだとばかりに、KIDは建物から姿を消した。
実弾が入っているのを確かめて、ジンは銃を握りなおす。
殺しはするなと、言われた事は無い。
する必要が無かっただけだ、完全になくなったとは思って居ないが。
殺したとしてもアシがつくだろう。
このままにしておけば、尚の事・・・。
自分だけでなく、アイツにも被害が及ぶ・・・。
「・・・アニキ、アニキが手を汚すこたぁ、無いですぜ?」
それをアニキが望むんでしたら、そうするだけです。
残党といっても、僅かしか残りませんでしたから・・・。
ゆっくりと起き上がったテキーラが、笑う。
未だに、ウオッカは倒れたまま。
致命傷だったのか、虫の息なのかはわからない・・・。
「火を放ち、自害しやすから・・・」
これ、あのガキが大事に握ってやした。
ヒビの入ったソレを、ジンは受け取って。
踵を返して、建物を出た。
アニキを敬愛していたのかも、しれない・・・。
組織の者で、アニキを知らない者は居なかった。
アニキに惹かれるのは、当然の事。
勢い良く燃え広がる紅蓮の中で、テキーラはウオッカに呟いた。
「わりぃな、アニキじゃなくて」
「・・・・・さ」
いいさ・・・・。
二発の銃声が響き、数分と待たずに炎は燃え広まった・・・・・・・。 |