[ If you wish to see everything about this world ] 〜 邂逅スペシャル!! 出会っちゃったら運命である! 編 〜 |
U. それからドラマの説明やら打ち合わせやら何やらがあったのだが、快斗は記憶がはっきりしない。あまりのことが多すぎて魂が半分抜けていたようだ。しかしその分青子がテキパキとまとめていたようである。阿部より敏腕マネージャーかもしれない。 そして気付けば本番当日だ。それでも台詞は完璧に覚えている辺りさすがである。 ロケ地は街中の交差点である。横断歩道で主人公の幼馴染達と擦れ違うというシーン。特に台詞はなく、快斗はただ青子と話しながら歩けばいいだけだ。 「宜しくお願いしまーす」 そう言って快斗達に挨拶に来たのは女の子二人。うち一人を見て快斗は首を傾げた。 「……………? 何か、青子に似てるな」 「えぇ、よく言われます。でも黒羽君も新一にそっくり」 「え?」 言われて快斗はきょとんとした。『新一』とは青子が散々騒いでいた『工藤新一』のことだろう。自分と似ているなんて、そんなことあの時は一言も言われなかった。 「えー、最初は似てると思ったけど、工藤君の方が断然綺麗だよ」 レギュラー陣と話せて嬉しいのか、青子はにこにこと笑いながらそんなことを言う。 快斗はふと思った。今の青子の言葉は十七歳の男子高校生に対して褒め言葉にはならないのではないだろうか。 「それにしてもあの『Kid』の二人と共演できるなんて夢みたいだわ!」 「ホント、そうよね。すごく楽しみにしてたんですよ」 「そんな、こちらこそ!『DETECTIVE』に出演させて貰えるなんて思ってもいなかったからすっごく嬉しい!」 「………『Kid』?」 和気藹々と話す少女達の会話に快斗は再び首を傾げた。キッドの役を演じているのは自分一人の筈だ。何故二人なのだろう。 そんな快斗の疑問を青子は正確に読み取った。幼馴染同士の意思疎通は既にツーカーである。 「あんた自分の出てたドラマの略称も知らないの?『Kid the Phantom thief』なんていちいち言うのメンドイじゃない。だから略して『Kid』」 「へー」 そんな二人の様子に少女達はクスクスと笑った。 「何か、やっぱりイメージ違うね。どうしてもドラマの影響が強くて」 「本当。中森さんはドラマよりずっとしっかりして見えるし、黒羽君は何だか無邪気だね」 「バ快斗はただガキなだけだよー」 「…………………ハハ」 快斗は乾いた笑いを浮かべる。色々口を挟みたいことはあるがこんなときは何も言わないほうがいいということを彼は身に染みて知っていた。 「本番いきまーす」 その声に人が動き出す。快斗達も立ち位置へと向かった。 その撮影は一発OK。素人とは言っても快斗も青子も既にドラマ経験者、少女達もこれまでの撮影で慣れているのだろう。 次の撮影では少しだけ台詞が入る。この回のラストシーンだ。これが終われば青子ははっきり言って用済みになる。 「いいよなーお前。これ終わったら帰れるんだろ?」 「馬鹿言ってんじゃないわよ。全部の撮影終わるまでいるに決まってんじゃない」 「へ? 何で?」 いつもは快斗のことなど放ってさっさと帰っていた青子である。 「こんなオイシイ機会に帰るなんて馬鹿以外何でもないじゃない!」 「………………………」 ミーハー根性で帰る気はないらしい。 快斗が半眼になって青子を見やったその時である。 「蘭姉ちゃーん」 「あ、コナン君!」 聞こえてきた声に快斗はゆっくりと、青子は残像が残る程の速度(それを横目に見ていた快斗はさりげなく青子と距離をとった)で振り向いた。 蘭と呼ばれた少女のもとに駆け寄ってくるのは小学生の男の子だ。大きな眼鏡をかけたとても愛らしい男の子である。蘭がコナンと呼んだのを聞いて彼が噂の主役だと快斗は判った。 なるほど。こんなに可愛い男の子が主役なら、それは人気が高かろう。 「キャアァーーーッ!! コナン君よコナン君、生コナン君―――っ!」 隣では青子が狂ったように騒いでいる。快斗は恥ずかしいと心底思った。このはしゃぎぶり、下手をすればショタコンに見られやしないかと幼馴染を心配してみたりもする。 青子の声に気付いて(大声で叫んでいれば当たり前である)コナンは快斗達の所へとやって来た。走ってくる様はとてつもなく可愛い。 「初めまして、工藤コナンです。ドラマの中では江戸川コナンを名乗っています。今日は宜しくお願いします」 そう言ってペコリと頭を下げる。主役をはっているだけあって礼儀正しくしっかりしている。それ以上に愛らしい。思わず快斗もほんわりとした気分になって笑みが零れた。 「俺は黒羽快斗。こちらこそ宜しくな。君のライバルになるらしいから、お手柔らかに」 お近付きのシルシ、と快斗はマジックでピンクの薔薇をコナンに差し出す。一瞬のマジックにコナンは目を瞠り、そして柔らかそうな頬を薔薇に負けない程紅潮させて受け取った。 「うわぁ、すごいや! えと、ピンクの薔薇の花言葉は『感銘』だよね? 快斗兄ちゃん、何に感銘を受けたの?」 コナンの「快斗兄ちゃん」発言に心の中で感涙しながら、彼のその知識に快斗は驚く。普通すぐに花言葉なんて出てこない。薔薇は有名だがよく知られているのは赤い薔薇の『愛している』だ。ピンクの薔薇はカーネーションに比べるとマイナーなのである。しかも小学生が感銘なんて言葉を知っていること自体にも驚きだ。 「ん? コナン君という存在に感銘を受けたのさ」 そして思った。自分もショタコン疑惑だ。 しかしキッドが気障な役だったのが幸いして幼馴染以外にはあまり深く取られなかったようである。青子の多々を含む視線を受け流して密かに胸を撫で下ろした。 一通り挨拶をし終わると蘭が辺りを見回しコナンに向き直った。 「コナン君、今日新一は?」 「あ、新一兄ちゃん事件があって呼ばれてるんだ」 「なーに、アヤツ最近おとなしいと思ったら、また性懲りもなく」 「………園子。新一が事件起こしてる訳じゃないんだから」 噂の工藤君は来ないらしい。というか、出番がないのに来ているのだろうか。彼女達の言動からすれば毎回来ているようだが。 快斗は抱いた疑問を訊こうと横を向いた。そしてすぐにその行為を後悔した。 自分の隣にムンクの叫びがある。あまり、いや、とても嬉しくない状況だ。 「く、工藤君今日来ないの!? いつもコナン君の付き添いで来てるって聞いたのに!!」 とりあえず快斗の疑問は解消された。確かにこんなに可愛く小さな弟がいるなら付き添いくらいするだろう。昨今世の中は危険でいっぱいなのだから、変態さんが現れでもしたら大変だ。先程自分もその変態さんの仲間入りかと思ったことは明々後日の彼方にうっちゃっている。 「あぁ、新一なら事件が解決したら来るわよ。どんなに遅くなってもコナン君の迎えにだけは絶対来てるの」 蘭のその言葉に青子は笑顔を取り戻した。これで今日の撮影が終わるまで現場にいるのは決定である。 「本番いきますよー」 その声に再び人が動き出す。今回は制服での撮影だ。快斗と青子の出番はもう少し後の方なので、邪魔にならないようにコナン達の演技を見学することにした。 「………へぇ」 思わずといった感じで快斗は感嘆した。 とても素人とは思えない程コナンの演技は巧い。いくら撮影に慣れてきているとは言っても、そこらの子役とは比べ物にならない程だ。 表情の微妙な変化、台詞の間の取り方、強弱、含めた感情。すべてにおいて大人顔負けである。 その後自分達も入り短い台詞を言って、この回も一発OKで幕を閉じた。 「快斗兄ちゃん、上手だね! 新一兄ちゃんみたいだ」 次の撮影現場に移動という時に快斗のもとへとコナンが駆け寄ってくる。相変わらず可愛らしい。ポーカーフェイスも形無しの相貌で、快斗はしゃがんでコナンと視線を合わせた。 「ありがとう。コナン君もすごく巧かったよ。新一兄ちゃんも演技得意なのか?」 「うん! 新一兄ちゃんが僕に演技指導してくれてるんだ!」 嬉しそうに応えるコナンに笑みを返しながら、快斗は探偵は演技力が必要なのかとふと考える。そう言えば白馬の演技もある意味堂に入っていた。最も白馬にこれ以上ないというくらい適役だっただけかもしれないが。それにコナンが演じるのは工藤新一である。自分のことだから演技指導もしやすいのかもしれない。 気が付くとコナンがじっと快斗を見つめている。どうやら周囲を忘れて考え込んでいたようだ。こんな可愛い子の前でと思ったところで、再びショタコン疑惑という言葉が脳裏を過ぎった。 「何かな? コナン君」 「………あのね、快斗兄ちゃんって、新一兄ちゃんとそっくりだね」 実の弟すら自分と工藤新一は似ていると言う。そこまで自分に似ている人物に快斗は少し興味が湧いた。 「そんなに似てる?」 「うん! 声も似てるよ。………でも、快斗兄ちゃんの方が少し恰好いいかも」 小さく首を傾げて言うコナンに快斗はこの世の春だと胸中で謳った。疑惑どころか確定しそうな勢いである。 コナンの「恰好いい」発言にすっかり気を良くして快斗はコナンに笑いかけた。 「次の撮影現場に一緒に行こうか」 「うん!」 笑顔で応えたコナンを快斗はヒョイと抱き上げる。驚いたのはコナンだ。思わず快斗の首にしがみついてしまった。 「か、快斗兄ちゃん! 僕歩けるよ!」 「いーからいーから。視界が高いと気持ちいいだろ? それに俺一人っ子だから弟とかにこんな風にするの憧れだったんだ。ちょっとだけお兄ちゃん気分味わわせてよ」 「………重くない?」 「全然平気。コナン君軽いなー」 快斗は本気でこんな弟が欲しいと思った。いっそ養子に………とまで考えてしまった頭はもう止められない。 「………やっぱり快斗兄ちゃん、新一兄ちゃんとそっくりだ」 可憐な花のような微笑みを浮かべてコナンが言った。その言葉はやけに快斗の記憶に残った。 BACK * TOP * NEXT |
----------------------------------------------------------- ミコトさまのコメント▼ 第二話、コナン君登場です。 ……すみません!! またも新一君出てきませんでした……!!; しかも今回短いし!! あああ、本当に申し訳ございません〜; えー、この話は快新でございます。快コではございません。これは確かでございます。 ……つ、次! 次こそ新一君の登場です! これも確かでございます!! もう少しだけお付き合い下さい; 前回、自分の文はとても読みにくいのだと悟りました。 反省しまして今回少しでも読み易くなるよう改善……なっているのでしょうか?; わー、素人素人; クロキさん、こんな話でごめんなさい……。早く続きをお届けできるよう頑張ります〜; ミコト |
----------------------------------------------------------- ▼管理人のコメント ミコトさん、第二話の贈呈、どうも有り難う御座いますvv マイペースでどうぞv…なんて言いつつ、続きを今か今かと待ち続けていた管理人であります(笑)。 そして今回はコナン君の登場!! 新一さんの弟ということで、原作で見せる可愛らしい部分だけのコナン君vv そらもう快斗だとて犯罪に走ってしまいそうですね!笑 そしてお預けをくらってしまった新一との対面は次回ということで… 今からひっじょ〜〜に楽しみにしてますvv どうも有り難う御座いました! |